バイクをメンテナンスするにあたって初心者の方に是非知っておいていただきたいことは、バイクのメンテナンスの第一の目的は、そのバイクを事故や不具合なく運転することだということです。
不具合がない状態を満たして初めて、それ以上のチューンナップが意味を持つのです。
ですから、まず初めはバイクがストックに近い状態をなるべく長期間保てるようにチューンすること(チューンナップでもダウンでもなくニュートラルなチューン)を心がけましょう。
以下では、バイク初心者の方がメンテナンスのためにまず覚えていただきたいことをご説明します。
初心者のためのバイク点検
まずは、バイクの点検です。
かなり地味な話ではありますが、点検こそがバイクのチューンに最も重要な作業です。
バイクを点検して、どこがどう悪いのかを知らなければ、いかなるチューンもやりようがないですからね。
では、バイクのどの部分を点検するべきかということですが、これには『ネンオシャチエブクトウバシメ』という言葉を覚えておくと便利です。
これは1日に3回唱えるとバイクの調子が良くなる呪文というわけではもちろんありません。
『ネンオシャチエブクトウバシメ』とは、バイクの点検項目の頭文字を並べたものです。
ネン(燃料)
当然ですが、燃料がなければバイクは走りません。
燃料計を確認する、あるいはタンクを直接覗き込むなどしてガソリンの残量をチェックしてください。
古式ゆかしい方法では、バイクを揺すってタンクのチャポチャポいう音で確認するという方法もあります。
オ(オイル)
主にエンジンオイルのことを指します。
2ストならばオイルタンクを見て残量をチェック。
4ストならばオイルゲージを見て確認しましょう。
4ストは基本的にエンジンオイルは減らないものなので、明らかに減っていればオイル漏れを早期に発見できます。
シャ(車輪)
タイヤはバイクが唯一路面と接地する部分であり、ライダーの命を支える重要なバーツです。
空気圧は適正か、釘などの異物は刺さっていないか、タイヤの溝は十分に残っているか、などをチェックします。
チ(チェーン)
チェーンはエンジンから発生したパワーを最終的にタイヤに伝える役割を果たしています。
チェーンの張りは適正か、錆びていないか、チェーンオイルは切れていないか。
チェーンの状態に不具合があると、最悪チェーン切れを起こすか、そこまで行かなくとも顕著にパワーダウンします。
エ(エンジン)
エンジンをかけて軽くアクセルをふかし、異音がしないか確認しましょう。
ここで確認する対象はエンジンから出る音であって、マフラーからの排気音ではありませんよ。
また、突っ掛かりなく吹け上がるかもチェックしてください。
このチェックはあまりしつこくやっているとご近所からうるさいと苦情が出るかもしれませんので、手早く済ませましょう。
ブ(ブレーキ)
ブレーキレバー(およびブレーキペダル)を握って(および踏んで)、遊びが適切か、また油圧式ブレーキの場合、ブレーキフルードの量は適切かをチェックします。
また、ブレーキパッド、ブレーキシューの減りも要確認です。
ディスクブレーキの場合は、ブレーキキャリパーの隙間からブレーキパッドの摩耗具合を目視してください。
ドラムブレーキは構造的に閉じているので目視することはできませんが、だいたいインジケーターがついているので、そちらをチェックしてください。
ドラムブレーキのインジケーターは車種によって多少異なるので、お持ちのバイクの取扱説明書を確認するか、あるいはネットでも情報を見つけることができるでしょう。
ク(クラクション、クラッチ)
クラクションは鳴るか、クラッチレバーの遊びは適切かを確認します。
トウ(灯火)
ヘッドライト、ウィンカー、テールランプは点灯、点滅するかを確認します。
特にテールランプは普段見えない場所にあるので、要注意です。
バ(バッテリー、ハンドル、バックミラー)
バッテリーの電圧は正常かを確認します。
セルがちゃんと回ってエンジンがかかるなら正常と考えて良いでしょう。
ハンドルを左右に振ってみてガタツキはないか、バックミラーの位置は正しいかも併せてチェックします。
シメ(増し締め)
各ボルト、ナットが正常に締められているかを確認し、増し締めします。
増し締めとは言いますが、作業的には手で回してみてゆるゆるになっていないか確認するというのがメインとなります。
とはいえ、バイクには無数のボルトやナットがついていますので、毎回すべてを確認していくというのは現実的ではありません。
したがって、命に関わるような部分に限定してチェックしていくのが良いでしょう。
点検箇所としては、フロントフォーク周り、ブレーキキャリパー、リヤサスペンションといったところです。
あと、命に関わるというわけではありませんが、ポロッと外れてしまうのがナンバープレート、マフラー、バックミラー、ブレーキレバー、クラッチレバーですね。
命に関わらないとはいえ、走行中に落としてしまうと後続車に多大な迷惑をかけ、最悪の場合は事故を引き起こしてしまう可能性があるので、上記の外れやすいパーツ周りもチェックしておきましょう。
初心者のためのバイク洗車
先述の点検を日常的に行いながら、定期的に実施したいのが洗車です。
1ヶ月に1回等のスパンを決めて行ってもいいですし、ツーリングに行くたびに洗車することにしてもいいでしょう。
いずれにしても、前にバイク洗車したのいつだっけ的な状況にならないことが大事です。
バイクを洗車するとなんといっても気持ちいいですし、オイル汚れなどで隠れていた欠陥が見つかることもあります。
実際の洗車の手順は以下のようになります
- キーシリンダー、スイッチハウジング、マフラー排気口などにビニール袋を被せる等してマスキングします。
- バイクの上から全体的に優しく水をかけていきます。
- バイク用シャンプーをつけたスポンジでバイク全体を上から順番に洗っていきます。
- バイクを上から水ですすぎます。すすぎ残しがないように丁寧に。
- バイクに残った水分をウェスで拭き上げます。セーム皮やマイクロファイバーのタオルがあればなお良いです。
- 最後にワックスやコーティング剤で仕上げます。
注意点としては、スポンジでバイクを洗うときに必ず上から順番に洗うということです。
足回りなどのバイクの下部は水で流しても流しきれない砂や土などの汚れが残っています。
そうした汚れがついたスポンジでタンクやフェアリングなどをこすってしまうと、思いっきり傷がついてしまいます。
それを防ぐために上から順番に洗うわけですが、もっというならバイクの上半分と下半分で使用するスポンジを分けるのが理想的ではあります。
6番に関しては、やらなくてもバイクは十分にきれいになっていると思いますが、コーティング処理をしておくとその後の汚れが付きにくくなるので、長い目で見ればやっておくほうが効率的と言えるでしょう。
初心者のためのバイクメンテナンス道具・工具
バイクのメンテナンスには工具やその他の道具が必要です。
工具に関しては初心者におすすめの工具セット◯選!のような情報をネット上でよく見かけますが、私個人的には、必要な工具を一つずつ揃えていくのが良いと思っています。
一つずつ揃えると言っても、何から揃えるべきかわからないと思いますが、そんなときには車載工具を基準にすると良いです。
車載工具は緊急時にそのバイクを応急措置するための最低限の工具です。
すなわち、そのバイクをメンテナンスするために最優先で必要な工具ということです。
しかし、残念ながらもともとの車載工具は非常に作りが悪いので、そのまま使用することはあまりおすすめできません。
すなわち、車載工具と同じ構成でレンチやドライバーを揃えていけば、最低限度の工具は揃えられるというわけです。
買うべき工具のブランドに関しては諸説ありますが、一般的な使用範囲でそれほど大きな差が出るものではありません。
お金に余裕があるならスナップオンで揃えてもいいですし、あまり余裕がないならば予算に合わせて買える範囲の工具で差し支えないと思います。
あともうひとつ必携なのが、トレーです。
私のおすすめはダイソーなどの100均で売っている20cm×30cmくらいのプラスチックトレーです。
このトレーはできれば3つくらいあれば理想的ですね。
なんのためにトレーが必要かというと、外したナットやボルト、使用中の工具などを入れるために必要なのです。
経験的に言わせていただくと、バイクから外したナットやボルトをそのへんに適当に置いておくと、必ずなくなります。
ここに置いとけば大丈夫と思っていても、トレーのような区切られたものの中でない限り、かなり高確率でなくなります。
バイクのメンテナンスを長年やっている方は、替えのボルトが手近にあるかもしれませんが、初心者の方はまず持っていないと思います。
ですので、初心者の方こそバイクメンテナンスに際してはトレーの用意が必須です。
初心者のためのバイクメンテナンスに関する本
今やネットであらゆる情報が見つかる時代です。
バイクのメンテナンスに関する情報もネット上にあふれていますが、どれが本当の情報なのか判別できないのも、また事実です。
バイクの初心者の方となれば、なおさら何を信じていいかわかりませんよね。
そんなときに頼りになるのがサービスマニュアルとパーツリストです。
バイクメーカーがその車種についてあらゆる情報を網羅した書籍ですので、間違いありません。
サービスマニュアルやパーツリストは整備士向けのマニュアルですので、あまり親切な表記とは言えませんが、実物とマニュアルを見比べながら点検をするといろいろと得るところがあると思います(中古車を購入した場合、後付の部品がわかるなど)。
サービスマニュアルとパーツリストはヤフオクなどでけっこう高額で取引されていので、安価で手に入れられる機会があれば購入するくらいの意識で良いでしょう。
あと、上にも書きましたようにサービスマニュアルやパーツリストはあまり見やすいものではありませんので、本屋さんにある一般的なバイクのメンテナンス本が一冊あると、とっつきやすくて良いと思います。
まとめ
以上、初心者の方向けのバイクメンテナンスについてご説明してきましたが、ここまでの内容をまとめると以下のようになります。
- バイクのメンテナンスは点検から
- 点検のポイントは『ネンオシャチエブクトウバシメ』
- 定期的にバイクを洗車しよう
- 工具の基準は車載工具
バイクのメンテナンスというと、いかにも速そうなチューンナップをしたくなりますが、それも基本的なバイクの点検がしっかりとできてから手を付けるべきことです。
実際、バイクに慣れたライダーから見れば、派手なチューンナップを施しているバイクよりも、しっかり点検整備されているバイクに乗っているライダーのほうが上手に見えるものです(実際そのとおりであることが多い)。
日々、丁寧な点検整備を行って、安全・快適でクールなバイクライフを送りましょう。